性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律(平成15年法律第111号)は、「性同一性障害者」を、「生物学的には性別が明らかであるにもかかわらず、心理的にはそれとは別の性別(以下「他の性別」という。)であるとの持続的な確信を持ち、かつ、自己を身体的及び社会的に他の性別に適合させようとする意思を有する者であって、そのことについてその診断を的確に行うために必要な知識及び経験を有する二人以上の医師の一般に認められている医学的知見に基づき行う診断が一致しているもの」と定義している(1条)。そして、性別を変更するためには、2名以上の医師の診断書(性同一性障害)を得た上(3条2項)で、家庭裁判所の司法判断(性別の取扱いの変更の審判)を受ける必要がる(同条1項)。変更の審判が認められるためには、①20歳以上であること、②現に婚姻をしていないこと(最決令和2.3.11令和2年重判8頁により合憲)、③現に未成年の子がいないこと(最決平成19.10.19家月60巻3号36頁により合憲)、④生殖腺せんがないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること(最決平成31年1月23日判時2421号4頁により合憲)、⑤その身体について他の性別に係る身体の性器に係る部分に近似する外観を備えていることが必要である。この特例法の要件については、今後も「不断の検討を要する」(平成31年最判)というべきである。