譲渡所得と贈与税の二重課税

個人から法人への贈与や低額譲渡については、みなし譲渡として譲渡所得税と法人税が課されます。

他方、個人から個人への贈与や低額譲渡については、みなし譲渡は行わず、贈与者の資産の取得費を受贈者に引き継ぐことになります。これは、増加益課税を後日の受贈者側の譲渡時に繰り延べていることになります。

いずれの場合も、資産の増価部分について、譲渡課税を行いながら同じ経済的価値について贈与税(受贈益課税)を行うようなもので、二重の課税とも思われます。

しかし、譲渡所得に対する課税は、資産の値上がりによりその資産の所有者に帰属する増加益を所得として、その資産が所有者の支配を離れて他に移転する機会に、これを清算して課税する趣旨のものと解されるところ、譲渡所得の課税の対象が、所有資産の保有と移転により生じた同資産の保有期間における増加益であるのに対して、贈与税の課税の対象は、贈与によって移転した財産であり、課税の対象が異なるのであるから、将来的に、原告が譲渡所得に対する課税を受けることになったとしても、課税対象が異なることを前提とした課税がされる限りにおいては二重課税とはならないとされています。

もっとも、「課税対象が異なる」という理由では、受取配当金の益金不算入の説明が難しいでしょう。この制度も、形式的には受取り側と支払い側で課税対象は異なるからです。

この説明としては、出資等とは異なり、対価性のない資産の移転については公平性の観点から課税を厳しくする態度であり、さらに「個人から個人へ」の贈与等と「個人から法人へ」の贈与等の規律が異なることからして、後者では課税の繰り延べすら認めないという一種のペナルティを与えるといった方がよろしいかもしれません。

いずれにしても、贈与や低額譲渡を行う場合には、事前に価格のチェック等留意が必要です。