簡易課税

消費税の計算は意外に難しいものです。この事務負担を回避するために簡易課税制度があります。これは、事業者の選択により、売上げに係る消費税額を基礎として仕入れに係る消費税額を算出することができる制度です。
 具体的には、その納税地の所轄税務署長に「簡易課税制度選択届出書」を提出した課税事業者は、その基準期間(個人事業者は前々年、法人は前々事業年度)における課税売上高が5,000万円以下の課税期間について、売上げに係る消費税額に、事業の種類の区分(事業区分)に応じて定められたみなし仕入率を乗じて算出した金額を仕入れに係る消費税額として、売上げに係る消費税額から控除することになります。

ただし、注意点もあります。仮に設備投資で支払った消費税が多額になった場合、原則的な計算方法であれば還付される場合であっても、簡易課税では消費税は納めることになります。また、簡易課税制度は、2年縛り(一度選択したら2年間は強制適用)のため、簡易課税を採用するかは、事前の事業計画と照らし合わせる必要があります。

ちなみに、インボイス制度導入により、簡易課税は将来的になくなる方向で検討されております(政府税制調査会)。これはインボイス制度は仕入税額控除の対象を課税事業者からの仕入れに限定するものですが、仕入先を限定しない簡易課税制度とは両立しないからです。


 ◆ 簡易課税制度を適用するときの事業区分及びみなし仕入率は、次のとおりです。

事業区分みなし仕入率
第1種事業(卸売業)90%
第2種事業(小売業、農業・林業・漁業(飲食料品の譲渡に係る事業に限る))80%
第3種事業(農業・林業・漁業(飲食料品の譲渡に係る事業を除く)、鉱業、建設業、製造業、電気業、ガス業、熱供給業及び水道業)70%
第4種事業(第1種事業、第2種事業、第3種事業、第5種事業及び第6種事業以外の事業)60%
第5種事業(運輸通信業、金融業及び保険業、サービス業(飲食店業に該当するものを除く))50%
第6種事業(不動産業)40%