共有者の1人がその共有持分の上に担保権を設定した後、その共有物について分割がなされても、その設定された担保権は依然として持分の割合において共有物全部の上に存在するのであって、たとえ担保権者がその分割協議に参加し、分割訴訟に補助参加したとしても、担保権者の承諾がない限り、担保権設定者が現物分割により取得した部分に担保権が集中すると解することはできないの原則です。もっとも、共有物分割訴訟の判決により分割による取得部分が確定したときには、抵当権もその部分に集中することを黙示の条件として抵当権が設定されたと見るべき特別の事情があるとして、抵当権が分割後の取得部分に集中するとされた事例があります(大阪地判平成4年4月24日判例時報1449号115頁)。ちなみに、共有持分上に設定された抵当権は分割された土地に当然に集中・移転するものではない、との大審院判決昭和17年4月24日民集21巻447頁が存在しますが、前掲大阪地判は、「その理は、当事者の合意による分割と裁判による分割を別異に解すべき実定法上の根拠はない」としております。