自己株式譲渡はお早めに

相続の開始があった日の翌日から,相続税申告書提出期限の翌日以後3年を経過する日までの間であれば,非上場会社株式を自己株式として発行会社に譲渡しても,みなし配当課税の対象から除かれ,非上場会社株式を単に譲渡したものとして所得税では分離課税となります(租税特別措置法9条の7)。

相続後に同族会社株式の処分を計画している場合は、相続税の申告期限から3年以内に行う必要がありますので、ご注意ください。

所得税法では,非上場会社の株主が自己株式として譲渡し,金銭等の交付を受けた場合,譲渡した者の所得計算について,「株式譲渡による収入部分」と「配当と見なされる収入部分」に区別されて計算されます。交付された金銭等について,譲渡した自己株式に対応する部分(➀)については譲渡所得の収入となりますが,これを超える部分の金額(②)は剰余金の配当とみなされ,配当所得として取り扱われます(所得税法25条1項5号)。所得税において,非上場株式の配当は原則として総合課税になること(年10万円相当以下の少額配当には,所得税で申告不要制度がある),株式の譲渡損が生じていても損益通算できないことから,自己株式譲渡による収入のうち②の部分が高額だと,単なる株式譲渡として収入の全額に分離課税が適用された場合に比較し,一般的には税負担が相当に重くなります。なお,上場会社が自己株式を取得した場合には,上記「みなし配当」としての取扱から除かれます(所得税法25条1項5号括弧書)。